犬や猫がアレルギー反応を起こしてしまった場合、「アナフィラキシーショック」がありえることをご存知でしょうか。
スズメバチに代表されるアレルギーですが、アナフィラキシーショックは人間のみではなく、ペットや動物も起こりえます。詳しく説明していきましょう。
もくじ
「アナフィラキシーショック」って、何だろう?
みなさんも、ススメバチに2回目に刺されてしまうと重症化(最悪死んでしまう)という話を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
これがアナフィラキシーショックです。
最初に刺された際の蜂の毒に対する免疫があるところに、2回目を刺されてしまうと、その反応が過剰に誘導されて起こる過敏反応を言います。
動物においても、人と同じように、ハチやアリなどの昆虫に噛まれた際に起こることがあります。
また、それ以外にも、食事や診断や治療に使用する薬剤(造影剤やさまざまな抗生物質、インスリンなど)が原因となることがあります。特に、毎年接種するであろうワクチンで起こることもあり、問題となっています。
今日は、そのアナフィラキシーについて、少し掘り下げて説明したいと思います。
1.アナフィラキシーの発症メカニズム
犬猫のアレルギー疾患の分類はI型からIV型まであり、アレルゲン(アレルギーの原因となる異物のこと)が体内に侵入した際に、その抗原に対する抗体やリンパ球が反応することで引き起こされます。
アナフィラキシーの多くは、IgE抗体を介したI型アレルギーであり、免疫反応が全身的に(複数臓器で)生じることで発症し、生命活動に影響を与えます。
その詳しい機序としては、特定のアレルゲンに対して一度IgE抗体が産生され、免疫が記憶されると、その後再度同じアレルゲンが体内に侵入した際に、IgE抗体を表面に持つ肥満細胞や好塩基球と反応することで、炎症を誘導する物質(ケミカルメディエーター)であるヒスタミンやトリプターゼ、ブラジキニンが放出されます。
それらの物質は、血管の拡張や血管透過性の亢進(血管の外に水が漏れる)、気管支や消化管平滑筋の弛緩、唾液等の分泌亢進を引き起こし、以下で紹介するアナフィラキシーの症状が発現します。
2.アナフィラキシーの症状
アナフィラキシーは、皮膚や粘膜、呼吸器、消化器、血管、神経系などあらゆる臓器に対して症状を引き起こします。
特によく見られる症状として、
顔の腫れなどの浮腫、ぐったりとする虚脱、呼吸困難、嘔吐、下痢などが急に起こります。
その他、蕁麻疹や意識障害、喘息様症状なども起こります。
COVID-19のワクチンでも話題となっているのでワクチンでも副反応が出る場合があることはご存知だと思いますが、犬や猫においても、ワクチン後のアナフィラキシーは気をつけなければなりません。
投与後1時間以内に起こるものから、数時間が経ってから症状が出る場合もありますので、ワクチンを接種した日は、よくご自宅で観察してあげてください。特に皮膚症状は、時間が経ってから起こりやすくなっています。
また、ワクチン接種後アレルギーは、1回目投与でも起こった例があると報告されています。
原理的にはワクチンの回数を重ねるごとに起こりやすくなるのですが、子犬や子猫を飼われた場合は1回目の投与から気をつけることをおすすめします。
3.アナフィラキシーの際の治療法
まずは全身状態の把握が先決です。
特に低血圧になっている場合や呼吸困難が生じている場合は、救急処置が必要になりますので、すぐにお近くの動物病院へかかってください。
必要に応じた点滴や昇圧剤投与、酸素吸入を行います。また、免疫反応が過剰に生じている状態ですので、免疫抑制の目的でステロイド剤や抗ヒスタミン剤の投与も必要となります。
ワクチン接種後や刺咬昆虫(ハチやアリ)、ヘビなどに噛まれたという既往歴があり、少しでもおかしいなと感じた場合は、すぐに獣医師の診察を受けられてください。

ハチはよく聞くけれど、アリやヘビでもアナフィラキシーの可能性があるは要注意ですね。
まとめ
アナフィラキシーショックは、アレルギーの一病態ですが、致命的になりうる疾患でもあります。
そのため、早め早めの対処が大切であり、普段から犬や猫ちゃんの生活環境の把握やワクチン接種日は時間に余裕を持っておくなどの対応を取ることで、何かあった際にすぐに動ける体制にしておくことをおすすめします。
また、ワクチン接種後のアレルギーについて少し触れました。
ワクチン接種によって副作用の可能性は少なからずありますが、それよりもワクチンにより得られる利益の方が大きいことを十分にご理解いただきたいと思います。
獣医師の先生は、アナフィラキシーショックに対する対処法、予防法をよく知っています。何かあれば、すぐにかかりつけの先生にご相談ください。

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