もくじ
フィラリアとは?
フィラリアとは糸状虫と呼ばれる糸のような細長い形をした寄生虫です。
体内にフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を持つ蚊が動物の血を吸うと、幼虫は動物の体内へ。幼虫は体内を移動しながら肺動脈(心臓から肺へ向かう血管)にたどり着き、成虫になって生殖を行うことでまた幼虫が生まれます。そして、その幼虫をまた蚊が運んで・・・と、フィラリアは、蚊を媒体として感染が広がるサイクルを持つ感染症なのです。(動物の中で生まれた幼虫は、一度蚊の体内に移動しないと成長できないため、
直接動物から動物に感染するわけではありません。)
フィラリアについては、こちらの記事でも詳しく説明していますが、犬の病気としてはとても知名度が高く、多くの犬の飼主さんは予防をされていることでしょう。
猫もフィラリアにかかるの?
犬ではよく知られるようになったフィラリアですが、では猫にも感染するのでしょうか?
実は、猫もフィラリアに感染します。
その他の哺乳類にも感染することもあるのですが、種によってその影響は異なります。では、犬のフィラリア症と猫のフィラリア症は、どう違うのでしょう。猫も犬と同様、予防をする必要があるのでしょうか?
猫のフィラリアについて、もっと詳しくお話していきましょう。
犬と猫のフィラリア症の違い
犬と猫ではフィラリアとの関係性に明らかな違いがあります。
猫はフィラリア症にかかる可能性のある動物ですが、
犬よりもフィラリアに抵抗力があるとされています。つまり、猫でも蚊に刺されると幼虫は体内に入ってきますが、犬の体内に比べ、猫の体内の方がフィラリアの成長に適した環境ではないために、成虫までは成長しにくいのです。
例えば、フィラリアに感染していない犬に100隻の幼虫を感染させたところ、ほぼ100%の犬の体内でフィラリアは成虫になり、平均60隻の成虫が肺動脈に寄生していたとする研究があります。これに対してフィラリアに感染した猫に関する調査では、その平均寄生数は6隻。
単純な比較はできませんが、成虫の寄生数に10倍も差があるのです。
しかし、注意が必要なのは、寄生数が少なければ安全、症状が軽いというわけではない点です。
猫は犬に比べて体のサイズが小さいため、
少数の寄生でも重篤な症状につながる可能性があるのです。
猫がフィラリアにかかると、症状は?
では猫がフィラリア症に感染した場合、どんな症状が認められるのでしょうか?
前述したように猫では少数の寄生でも重篤な症状につながる可能性がある一方、
ほとんどのケースでは無症状または軽い症状しか観察されないことがあります。観察される症状としても、やや元気がない、持続する呼吸促拍、消化器症状(おえっと吐き気を催した様子を見せるなど)など、わかりにくいものが多く、診断に至らないこともしばしばです。
またこういった症状は、フィラリアが肺動脈に到着した第一段階として現れることがありますが、一過性で治まります。
そして寄生したフィラリアが死んだ際にまた症状が発現・・・という様に、常に症状が続くわけではないこともあり、飼い主さんが症状に気が付かぬまま突然死につながるパターンもあります。
犬の場合は、大量の成虫が寄生し大静脈症候群と呼ばれる急激な呼吸苦や虚脱、褐色尿など、はっきりとした重篤な症状が現れることも多いのですが、フィラリアの寄生数が少ない猫では、こういった大きな症状が認められることは稀で、感染に気が付きにくいことが特徴です。
猫がフィラリアにかかった場合の治療は?
偶然フィラリアへの感染がわかったものの全く症状がない場合、慌てて治療をする必要はないとされています。
数か月ごとに胸部レントゲン検査、抗原検査を行い、自然に消失するのを待つことができる場合もあります。軽い症状が認められる場合には、プレドニゾロンなどのステロイド剤が有効な場合もあり、使用が推奨されています。
しかし、もしも急に重篤な症状が発現した場合には、動物病院で状況に合わせて輸液、酸素吸入、投薬などの積極的な支持療法が必要となることがあります。
犬で成虫駆除に用いられるメラルソミン(日本国内では未承認)は、猫ではデータが少なく、低用量でも毒性があるとの報告もあることから推奨されていません。
寄生数が多く重篤な状態にある場合や、大静脈症候群に至ってしまった場合には、外科的に虫体を摘出する方法がとられることもあります。
猫のフィラリアの予防方法は?
猫でも犬と同様に予防をした方が良いですか?と聞かれたら、その答えは間違いなく「はい」でしょう。
猫においても、月に一度の予防薬投与は安全で効果的な方法とされています。特にフィラリア症の存在する地域では、室内飼育の猫ですら25%でフィラリアに感染していたという報告もあることから、感染率は決して低いとは言えません。
予防をすることで防げる病気であることから、今後飼主さんへの積極的な予防への意識が求められると考えられます。
まとめ
あまり知られていない「猫のフィラリア症」のお話、いかがでしたか?
猫のフィラリア症については以前から一定数の感染が認められており、今まで見落とされていたものがやっと近年になって認識されるようになったのであって、近年増えてきたというわけではありません。まだ犬に比べて病態や治療に関するデータなど情報が不足している部分はありますが、その危険性は徐々に認知されてきています。
フィラリア=犬の病気と思わず、猫を飼育されている方には今後積極的に情報を集めて、注意を傾けて頂ければ幸いです。
猫ちゃんだから大丈夫。と油断せず、しっかりと予防をしてあげましょう!

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参考文献:
Current Feline Guidelines for the Prevention, Diagnosis, and Management of
Heartworm(Dirofilaria immitis) Infection in Cats;American Heartworm Society. 2020