もくじ
犬の咳について
今回は、「ワンちゃんの咳」というテーマで、咳という症状と、関連する病気について解説したいと思います。
皆さんは犬の咳を聞いたことがあるでしょうか?
人の咳とは異なり、犬の咳は「カハッ」「カッカッ」「ガーガー」「ゼーゼー」といったものが多いため、食べたものを吐き出そうとしている動作に見えたり、嘔吐のように見えることもあります。
また、病院に連れて行ったときに咳が出るとは限らないので、症状が出たときに動画などに残して、先生に見てもらうのもいいでしょう。
他には、
・咳が出るタイミングやどれくらい続くか
・年齢や飼育環境
・予防歴(フィラリア、ワクチン)
・咳以外の症状の有無(呼吸が苦しそうかどうか、活動性の低下、食欲不振、嘔吐や下痢)
などが診断に役立つ情報として挙げられるので、事前にある程度まとめておくといいかもしれません。
すぐに病院へ!〜緊急性の高い状態
咳の原因が呼吸器や循環器の病気の時もあるため、場合によっては呼吸困難を生じ、命に関わることもあります。咳以外にも、次のような場合には、緊急性が高い可能性がありますので、可能な限り早い対応をしましょう。
・ぐったりしている、または、意識が無い(反応が弱い)
・ 口を開けて、大きく呼吸している
・横になって休むことができない(一般には「おすわり」の姿勢が一番呼吸が楽なので、呼吸の問題がある場合は横になれずずっと座っていることが多いです)
咳の原因となる病気
咳の原因となる病気はたくさんありますが、代表的な病気としては以下のようなものがあります。
ガーガーとした咳が特徴「気管虚脱」
小型犬に多い病気で、名前の通り呼吸をするときに気管がつぶれてしまう(=虚脱)病気です。
「ガーガー」といったガチョウの鳴き声のような咳が見られます。
気管の潰れ方にも程度の差があり、悪化すると呼吸困難を起こすこともあります。
子犬では悪化する場合も「ケンネルコフ」
犬伝染性気管気管支炎という病気で、様々なウイルスや細菌の混合感染によって引き起こされます。
多頭飼育や衛生状態の良くない環境下で多く見られることから、ケンネル(=犬舎)コフ(=咳)と呼ばれています。
子犬では重症化したり、咳が慢性化して治りにくくなってしまうことがあります。
食べ物が気管に入ってしまった!「誤嚥性肺炎」
肺炎には様々な種類がありますが、多く見られるのがこの誤嚥性肺炎で、うまく飲み込めなかった食事や嘔吐物が、食道ではなく気管の方に入ってしまうことで起こります。
他の病気でよく吐いてしまう子や、子犬や高齢犬で飲み込む力が弱い子では特に注意が必要です。
「犬糸状虫症(フィラリア症)」で咳が出る場合も
フィラリア症でも咳が見られることがあります。
感染の程度や期間によって、肺や心臓に様々な影響が出るので、状態に合わせた治療が必要になります。
運動嫌いや咳でわかる「心臓病」
小型犬で一般的な僧帽弁閉鎖不全症という病気でも、咳が見られることがあります。
比較的初期の心臓病の症状としては、運動を嫌がる、軽度の咳、などがありますが、進行してくるとさらに咳がひどくなったり、肺水腫による呼吸困難が生じることがあります。
咳が見られたとき、どんな検査をされるの?
主に咳の症状で来院した場合、まずは緊急かどうかの判断を行います。
呼吸の問題がある場合には、すぐに酸素吸入や他の処置の準備を行います。検査が可能と判断した場合は、必要な検査を進めていきます。
問診では上記の通り、咳の様子だけでなく、これまでの飼育環境、予防歴、他の症状などの情報が重要になります。
一般身体検査では、患者さんの呼吸や咳の様子をはじめ、聴診で心音や呼吸音、首輪を使用しているか、首に腫れなどの病変がないか、などを確認していきます。
詳しく知りたい飼い主さんのために・・・大切なワンちゃんの健康を守る検査
咳の後ろに潜む病気を明らかにするために、大切な家族であるワンちゃんがどんな検査を行われるのか、気になる飼い主さんもいるかと思います。
少し専門的にはなりますが、詳しく知りたい飼い主さんのために、それぞれの検査について説明しておこうと思います。
血液検査
血液検査では咳の確定診断が出来ることは少ないですが、患者さんの全体的な状態を判断することができ、またフィラリアの感染のチェック(抗原検査およびミクロフィラリア検査)が可能です。
レントゲン検査
レントゲン検査は咳の診断のための検査としては一番良く実施される検査ですが、胸のレントゲン検査を行うと、肺や気管、心臓の評価をすることができます。
肺などの病変の場合は複数方向から撮影したり、気管虚脱を疑う場合には息を吸う・吐くタイミングでそれぞれ撮影したりするなど、状況によって様々な方法で撮影を行います。
超音波検査
心臓の評価のため、超音波検査が実施されることもあります。
超音波検査は空気が苦手(うまく映らなくなる)なので、これまで肺の評価に用いられることはあまりなかったのですが、肺水腫や炎症の簡単な評価が出来ることが分かっており、最近ではそのような目的でもよく利用されています。

検査の種類は想像以上に多いですね。
更に追加検査をする場合も
多くの動物病院では、ここまでの検査がメインとなりますが、必要な場合は以下の追加検査を検討することがあります。
しかし、以下の検査はどこの施設でも実施できる訳ではなく、また麻酔を必要とするものもあるため、ここまでの検査を行った上で本当に必要か、また麻酔のリスクに耐えられるかどうかの判断が必要となります。
胸部CT検査
胸部CT検査ですが、これはレントゲン検査と同じ原理で、体の断層撮影を行うものです。
体の隅々まで検査が可能なことと、レントゲンよりも細かい評価が可能となります。
例えば病変の正確な位置や、レントゲンでは映らないくらい小さな病変(数mmレベル)の検出が可能です。
気管支鏡検査
もう一つの特殊検査として気管支鏡検査がありますが、これは胃カメラ(=消化管内視鏡)をイメージしてもらうと分かりやすいのではと思います。
胃カメラは食道から胃や腸を観察しますが、こちらは気管や気管支の内部を観察します。
また、胃カメラと同様に、スコープを通しての採材が可能なので、気管内部の分泌物などを採取して、細胞の評価や、病原体の検査などを実施します。
「たかが咳」は大間違い。気になったらすぐに病院へ
ここでは咳の原因について、一般的なものに絞って簡単に解説しましたが、犬の咳には色々な病気が隠れている可能性があり、状況によって必要な検査も様々で、診断や治療に時間がかかる症状の一つです。
しかし、咳は重度の場合は生命に関わることもあり、またそこまでではなくとも、生活の質を下げる原因にもなります。
まとめ
原因が何であれ、咳が続くことで呼吸器系が障害を受け、より咳が出やすくなったり、治療の反応が悪くなる可能性もありますので、少しでも気になる症状があれば早めに受診することをおすすめします。

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