体温は、体の状態を判断する重要な指標の1つです。
我々ヒトでも自宅で測定できる健康の判断基準の1つとして身近なものであり、このコロナウイルスに関連した情勢下でまた一段と有用性が増しました。
体温測定を行い、熱があれば場合によっては学校や仕事を休む、または病院に行くなど、多くの方にとって馴染み深いものだと思います。
では動物において体温を測ることにはどんな意味があるのでしょうか?
ヒト同様に、動物においても体温は重要な身体の状態の評価指標です。
しかしながら、ヒトと動物の体の構造等の違いからヒトにおける測定方法や体温の基準をそのまま当てはめることはできません。
この違いを今回は犬、猫に関して説明していきましょう。
もくじ
犬や猫は人間より体温が高い?
・犬の体温は37.5~39.2℃
・大型犬はやや低め、小型犬はやや高め
・若齢猫ではやや高め、高齢猫ではやや低め
まず犬猫共にですが、通常はヒトより体温が高いことが一般的です。
体温には大きく分けて外殻温度(体表温度)と核心温度があります。
核心温度は頭や体の中枢の温度のことであり、これは周囲の環境の温度にほとんど影響されません。
対して体表の温度は体の表面や四肢などの温度のことで、環境など周囲の温度により大きく変化します。
体温測定は通常この核心温度を測定しますが、多様なデータがあるものの、一般的に犬では37.5~39.2℃で、大型犬はやや低め、小型犬はやや高めの傾向があることが多いです。
猫でもほぼ同様ですが、若齢猫ではやや高め、高齢猫ではやや低めとなる傾向があります。
37℃以上あると聞くと、ヒトよりもとても高いように感じますね。
しかし、ヒトでは一般的に腋窩(わきの下)での体温測定が行われますが、これは測定値が実際の核心温度よりもやや低くなるとされています。
実際のヒトの核心温度は36~38℃と言われているので、私たちの認識とは多少差があるかもしれません。
犬猫専用の体温計があるの?
・犬猫の体温測定はわきの下でなく肛門から
・人間用の体温計でなく、犬猫用を
・耳式体温計も手軽
それでは、犬や猫での体温測定はどのような方法で行われるでしょうか。
犬猫では毛、皮膚の違いなどから腋窩での体温測定は一般的ではありません。
従来から、体温計を肛門に入れて測定する直腸での体温測定が行われており、この直腸温度は腋窩温度に比べて核心温度に近い値が測定できると言われています。
飼い主さんから、ヒト用の体温計を犬猫で使用してよいかどうか聞かれることがありますが、多くの
ヒト用腋窩測定用体温計は先端が硬く、直腸などの柔らかい部分に挿入するのは危険です。
もしも犬猫の直腸温度を測定する場合には、犬猫専用の直腸用体温計を用いましょう。
先端が柔軟でフレキシブルな作りになっているため、動物の体への負担も軽減されています。
とは言っても、じっとしていない動物をおさえて肛門に体温計を挿入するのは一般のご家庭では難しかったり抵抗があったりするかもしれません。
最近では、ヒトと同じように犬猫でも耳で測定するタイプの体温計も販売されているので、その方が動物やご家族への負担が少なく利用しやすいかもしれません。
研究用では、カプセル型で飲み込むタイプの体温計もあるのですが、今のところ一般的ではありませんね。
動物の体温で何がわかるの?
・40.0℃を超える場合には病院へ !
・早期の発見・受診が大切
・体温が下がる場合も注意
体温の変化を見ることでどのようなことがわかるのでしょうか?
ヒトでも体温が高い時には風邪や病気が疑われるように、動物でも体温が高い場合には注意が必要です。
犬猫においても前述の範囲を超える体温の場合には高体温とされ、明確な基準はありませんが 40.0℃を超える場合には動物病院への受診が推奨されます。
体温が上がる原因として大きく分けると、感染性のものと非感染性のものがあり、感染性のものは細菌などの病原体が体内のどこか、または全体に感染することで引き起こされます。
非感染性のものにはその他の炎症性疾患や熱中症など多くの原因が含まれますが、これは外観から判断ができることは少ないためやはり病院での検査が必要です。
一般に、犬猫の熱中症の基準は41℃以上の発熱と定義されていることが多いですが、41℃以上の発熱で神経細胞等への損傷が起こるとされており、より早期に発見、対応または受診することが望まれます。
ただし、高体温=病気というわけでもなく、運動や興奮、緊張などでも体温は正常範囲以上に上がることがあるため、原因が何かをしっかりと把握する必要があります。
体温が下がる場合も注意しましょう
反対に体温が下がる場合はどうでしょうか?
日常生活の中で体温が正常範囲以下に下がることはあまりありません。
一般的に高齢の動物ではやや体温が低くなることがあります。
また測定エラー(直腸測定の場合に、体温計先端が便に刺さってしまっているなど)にも注意が必要です。
健常な個体では熱を体内で産生できるため、多少の環境温度には対応できますが、何かしらの原因で熱産生ができない、追いつかない、それ以上に環境温度が低すぎるなどが起こると低体温症が発生し、場合によっては命に関わるため、高体温と同様に早期の対応が必要です。

定期的に体温を測って、平熱を把握しておきましょう。
まとめ
これを機会に、犬猫においても体温を定期的に測定し、変化を捉えることも健康管理の一環としてぜひ試してみてください。
普段からご家庭で測定することでペットの平熱を把握することも大切です。
ただし頻繁に測定しすぎる、嫌がる動物を無理やり押さえつけて測定する、などはペットとの信頼関係にも影響する可能性があるため、動物に負担が少ない方法を考えていくことが大切ですね。

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参照文献
・Heat stroke in dogs: A retrospective study of 54 cases (1999-2004) and analysis of riskfactors for death; Yaron Bruchim, Eyal Klement, Joseph Saragusty, Efrat Finkeilstein, PhilipKass, and Itamar Aroch: J Vet Intern Med 2006;20:38–46
・Telemetric measurement of body core temperature in exercising unconditioned Labradorretrievers; T. Craig Angle, Robert L. Gillette: The Canadian Journal of Veterinary Research157, 2011;75:157–159