食に困らず、快適に過ごせる生活環境を手にし、医療も発達した現代社会。
人が100歳を超えて生きることも珍しくなくなりました。
そして、それはペットでも同じこと。
令和2年 全国犬猫飼育実績調査(一般社団法人ペットフード協会)によれば、
犬の平均寿命は14.48歳、
猫の平均寿命は15.45歳。
ある動物病院がペットの死亡年齢を30年間統計をとったところ、1990年代の犬の寿命は10歳前後だったという記録もあることを考えると、※1 ペットも高齢化していることがはっきりとわかります。
そして、高齢化に従って増加する認知症の問題も、例外ではありません。
獣医師の立場から、
犬の認知症のサインとメカニズム、そしてきをつけてあげたい介護について、
2回に分けてお話していきます。
もくじ
シニア犬になったら気づいてあげたい 犬の認知症は12歳頃から
犬の認知機能不全症候群は12歳以上での発症が多く、16歳以上の約60%前後に見られると言われます。
脳にアミロイドという物質が蓄積したり、
大脳皮質の菲薄化や脳室の拡大が見られます。
神経伝達物質が減少することも知られています。
犬の認知症のサインと症状
高齢になったら健康状態に気を配るのはもちろんですが、
認知症は日常生活の中に兆候があらわれることがあります。
「うちの子、もしかして認知症かな?」
と思ったら、次のようなサインを注意してみてみましょう。
・今までできていた号令に従わなくなる
・名前を呼んでも来ない
・ボーッとしてることが多い
・ウロウロする、徘徊する
・いつもの散歩コースが分からなくなる
・無駄に吠える
・部屋の隅で動けなくなることがある
・日中の睡眠時間が長くなる
・夜に眠らない
・トイレを失敗するようになる
この中の 3つ以上が当てはまると認知症の可能性があります。
犬の認知症で飼い主さんができる治療
認知機能不全は進行性の疾患ですが、
治療を行うと進行はゆっくりにすることができます。
しかし、どうしても少しずつ進行はしてしまいます。
完治しない分、認知症が進行していく中であっても飼い主さんとワンちゃんの生活の質を高めることが、治療の目的になります。
シニア犬の幸せのために認知症と共に暮らす
・散歩の時間を決め、決まった時間に連れて行く
・新しいおもちゃなど、刺激を与える
・他の動物や人との接触の機会を増やす
・日中はなるべく寝ないように、起こしておく工夫をする
・夜間の睡眠前に運動をさせ、熟睡してもらうことで夜中起きにくくする
など、行動療法
によって進行を遅らせることができます。
また、さらに認知症の症状が進行してきた場合には
・徘徊する場合には円形サークルや転倒時に怪我しないように滑り止め、衝撃吸収性のある敷物で保護する
・食事の場所や水飲み場、トイレを近くに分かりやすくする
など、ワンちゃんが暮らしやすい環境を整えてあげましょう。
犬の認知症改善に処方されるお薬
その他、DHAやEPAなど不飽和脂肪酸や抗酸化剤、
メラトニンの入った食事やサプリメントを投与して進行を遅らせる方法や進行を遅らせる薬の投与も一部では有効な場合もあります。
また夜泣きがひどくご近所迷惑になるなど必要がある場合には鎮静剤投与など薬物療法を行うこともあります。
家中をコロコロと駆け回っていた仔犬が、いつのまにかすっかり落ち着いたシニア犬に。
大切な愛犬が長生きしてくれるのは、とても嬉しいことですよね。
健康で幸せな犬生を送ってもらうために、ワンちゃんにいつもと変わったことがないか、日頃から気がけて様子を見てあげましょう。
次回は、認知症のわんちゃんの食事と排泄の介護についてお話していきます。
※1 日本獣医師会雑誌 第64巻 第1号 「家庭動物(犬猫)の高齢化対策 ―飼育者にその死をどう受け入れさせるか―」

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