知っておきたいペットの病気|小型犬の3割がかかる僧帽弁閉鎖不全症

2020年12月1日

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アニー先生

小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢以降の小型犬に多く、10歳以上の小型犬の30%以上が罹患し、犬全体での罹患率は中高齢以降でおよそ5-10%程度がかかる、犬でもっとも多い心臓病です。
日本は小型犬の人気が高く、病院では、
チワワ、マルチーズ、トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・ダックスフント、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、シー・ズーなど
がこの病気にかかっている例がよく見られます。
愛犬がこういった犬種の場合は特にですが、他の犬種においても、中高齢以降では、ホームドクターでの定期検診や各種予防接種などの際に、しっかりと聴診をしてもらい、この病気の発見につなげることが重要になります。

僧帽弁閉鎖不全症はどんな病気なの?

この病気はその病名の通り、僧帽弁と呼ばれる心臓内の弁の問題です。
心臓は上下・左右の4つの部屋に分かれており

、心臓に戻ってきた血液を心房で受け取り、その血液は心室を通って心臓から送り出されます。心臓の右側と左側はそれぞれ肺と全身へのループを形成しているため、血液の流れとしては(右心室→肺→左心房→左心室→全身→右心房→右心室→)となります。
僧帽弁は左心房と左心室の間にある弁であり、通常は血液の逆流を防ぎ、一方向のみに流れるように機能しています。この僧帽弁に変性が起こることで(粘液腫様変性と呼ばれます)、弁の閉鎖が不十分になり、 血液の逆流が生じます。
この状態が「僧帽弁閉鎖不全症」や「僧帽弁逆流症」です。
血液の逆流は心臓への負担となり、心臓のポンプとしての働きを邪魔してしまいます。進行とともに、心臓への負担による心拡大や、血液の鬱滞による鬱血性心不全などが見られるようになります。
特定の犬種がこの病気になりやすいことから、遺伝的な要因が病気の発症に関係していると考えられていますが、詳しい原因についてはまだわかっていません。
中高齢以降の小型犬で特徴的な心雑音が聴取されれば、この病気であることがほとんどです。しかし聴診のみでは診断や、重症度の評価は出来ないため、他の検査(レントゲン検査、超音波検査、血圧測定、心電図検査など)を併用します。
さらに、他の疾患の把握や、心臓以外の臓器の機能の確認のため、血液検査や尿検査なども行われます。

アニー先生
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難しい病気だからこそ、しっかりと知っておきましょう。

症状:咳や疲れやすさから、呼吸困難へ進行する

初期では症状はほとんどありませんが、進行とともに、疲れやすくなる、遊びや散歩の時間が短くなるなどの症状が現れます。
咳が見られたり、その頻度が増えるのも悪化の徴候です。さらに進行すると、血液の鬱滞により肺に水が染み出す肺水腫を発症することがあり、この状態になると呼吸困難の症状まで示すようになります。
重度なものや、治療への反応が乏しいものでは、呼吸困難や不整脈、臓器の低酸素により死亡につながることがあるほどです。

病気のサイン:心雑音と家庭での変化

上述の通りこの病気は初期には症状を起こさないことが多く、進行とともに症状が現れます。
多くはないですが最初から肺水腫による呼吸困難などの重い症状で来院される子もいますので、 早い段階でこの病気の存在に気付くことが大切です。僧帽弁逆流によって心雑音が生じますが、ほとんどの場合では症状が出る前の段階で聴診によってこの心雑音に気付くことが可能です。
健康診断やワクチン接種の際に、初めて心雑音を指摘されることも多いので、その際はかかりつけの先生と相談して、必要な検査へと進むことをおすすめします。
心雑音が聴取され、レントゲンや超音波検査などで僧帽弁閉鎖不全症と診断されても、すぐには治療の必要が無い段階であることもよくあります。この病気の進行にはかなりの個体差があり、投薬を開始するタイミングの見極めや、病気の進行を把握するためにはレントゲンや超音波検査などによる定期的な検査が重要になります。また初期の症状である、疲れやすさや軽度の咳などは、病院では把握が難しいため、ご自宅で注意して見ていただくことが必要になります。

治療:自宅での投薬が鍵

唯一根治が期待できる治療法は、外科手術による僧帽弁の形成術です。
しかし、少しづつ選択肢の一つとして広まってはきているものの、この手術が実施できる病院には限りがあり、多くの場合は投薬による内科療法が行われています。
治療に使われる薬には、強心薬(ピモベンダンなど)、降圧剤(ACE阻害剤)、利尿剤(フロセミドやトラセミド)、血管拡張薬、抗不整脈薬などがあり、これらを病態によって組み合わせて使用します。
投薬による治療を開始した後も、投薬内容が今の病態にあっているかどうか、副作用が出ていないかの確認のために定期的なチェックが必要になります。内科療法ではご自宅での投薬が鍵となりますので、投薬が難しい、あるいは不安がある場合にも獣医師に相談してみてください。
多くの病院では、投薬補助グッズが置いてあったり、先生の投薬のお手本を見せてもらえると思います。
投薬が難しい子とは逆に、おやつタイプの心臓病の薬を喜んで自分から食べてくれる子の場合は、 盗食による過剰摂取のリスクがありますので、薬の保管には気をつけてあげてください。

治療中の日常は、無理なくストレスなく

日常生活でもいくつか細かい注意点があります。
まず運動ですが、基本的には症状が落ち着いていれば、極端な運動制限は必要なく、適度な運動(普段のお散歩など)は体調維持のために続けた方が良いとされます。
ただし、心臓の疾患を抱えていることを念頭に置いて、競技などの過度な運動や、暑い中や長時間の運動は控えるようにしてください。食事については、ある程度進行したものでは、適度に塩分が制限され、良質なタンパク質と十分なカロリーを含む食事が推奨されていますが、十分な科学的な裏付けがあるわけではありません。
少なくとも 人の食べ物は、(例え疾患が無くても)犬にとっては塩分が多いので与えないようにしてください
また、シャンプーやトリミングを嫌がってしまう子は、無理に処置をするとその負担で調子を崩してしまう可能性があるので、トリミングサロンや動物病院に相談するようにしてください。

アニー先生
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心配な症状を見つけたら早めの受診をおすすめします。

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症の内科治療では、あくまで病気の進行と症状を抑えるための投薬治療であって、残念ながら病気そのものを治すものではありません
それでも進行が急でなく、内科治療に反応してくれる子では、治療期間は何年にもわたることもあり、注意点も病気の重症度やその子の性質によっても様々です。
どの段階であっても、定期的な病院でのチェックが重要になりますので、心配なことがあればすぐに獣医師に相談するようにしましょう。

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