「犬にも生理がある」・・・犬の飼い主さんなら、「当たり前!」と言うかもしれません。
たしかに、犬でも女の子は、陰部から出血がみられることがあります。
飼い主さんはこれを「生理」と表現されることが多いのですが、実は犬の「生理」はヒトの「生理」とまったく異なるものです。
今日は、「犬の生理」についてお話していこうと思います。
もくじ
犬の生理中は妊娠しやすい時期
皆さんもご存知のように、ヒトの「生理」すなわち月経は、子宮内膜の周期的な剥離・脱落のことを言います。
通常は排卵から約14日間後に、妊娠が成立しなかった場合に厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちることで生じます。
ヒトでは「生理中」は妊娠しにくい時期です。
これに対し、犬の「生理」は排卵の前から始まり、出血している期間の途中で、排卵が起こる「発情出血」です。
つまり、犬では「生理中」とは妊娠しやすい時期なのです。
犬の発情周期と年齢
犬は生後8-10ヶ月齢ごろから発情が始まることが多く、その周期は年1~2回です。
一般的に小型犬のほうが発情周期は短く、大型犬ほど長くなる傾向にあります。
高齢になると不定期的になることも少なくありません。
犬の発情周期は、このようなサイクルです。

・発情前期
外陰部の腫れ・充血が始まり、陰部から出血がみられます。
この時期は平均5-10日間続き、まだ雄犬の交尾行動を許容することはありません。
・発情期
外陰部はさらに腫れて大きくなり、まだ陰部からの出血もみられます。
雄犬による交尾行動を許容する時期で、6~12日間程度続きます(平均10日間)。発情期の第3日に排卵が起こりますが、この発情期の間はいつでも妊娠可能です。(つまり、雄犬を許容する時期が交配・妊娠の成立する時期です)
・発情後期
出血はみられなくなり、雄犬の許容もしなくなります。
妊娠、偽妊娠がみられる時期であり、約2ヶ月続きます。
・無発情期
卵巣活動が休止する時期であり、心身ともに安定している時期になります。
この時期の長さは犬種によって異なっていて、3ヶ月~13ヶ月とされます。
発情中の変化
個体差はありますが、下記のような変化がみられることがあります。
・陰部を舐める
・おちつきがなくなる、興奮しやすい
・マウンティング
・元気、食欲の低下
ただし、これらの変化には病気が隠れている場合もありますので、症状が強い場合や発情周期の異常がみられる場合には、速やかに動物病院を受診するようにしましょう。
「犬の生理」には3つの対策を
・室内の汚れ対策
陰部からの出血が床やソファ、カーペットなどに付着し、室内が汚れてしまいやすいので、愛犬の生活空間にペットシーツやジョイントマットを敷くなどの方法で対応するとよいでしょう。オムツを履かせておくのもひとつの方法ですが、かぶれに注意しましょう。
・元気、食欲低下への対策
体調の変化によるものですので、散歩に行きたがらない様子であれば無理に連れ出すのはやめましょう。食欲低下に対しては、ウェットフードやトッピングなど嗜好性の高いものを試してみるのもひとつです。
・妊娠対策
さきほど述べたように、犬の「生理」は妊娠しやすい時期です。
望まない妊娠を避けるためにも、犬の集まる場所に行くのは避けましょう。
生理前後は、愛犬の体調に気をつけましょう
犬の発情は、犬の体の正常な変化ですが、
膣炎や子宮蓄膿症といった子宮の病気と症状が非常によく似ています。
とくに子宮蓄膿症は、発見が遅れると命を落とすこともある怖い病気です。
子宮蓄膿症では下記のような症状がみられることがあります。
・外陰部からの出血、膿のようなおりもの(出血・排膿がないことも)
・元気、食欲の低下
・歩きたがらない、歩き方がおかしい
・腹部の熱感、腹痛、お腹が膨らんでいる
・水をよく飲む、尿量が増える
「いつもの生理」と油断せずに、「生理」の前後はとくに犬の体調に注意し、子宮蓄膿症が気になる場合には、迷わず獣医師に相談するようにしましょう。

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著者・田積佳和先生のプロフィール
山口大学農学部獣医学科卒業。ゆう動物病院(兵庫県加古郡播磨町)院長。
JAHA認定・総合臨床医。【所属学会】(ISFM(国際猫医学会),日本獣医皮膚科学会,日本小動物歯科研究会,日本獣医動物行動学研究会,災害動物医療研究会)