「猫舌って言うけど、猫はほんとに熱いものが苦手なの?」
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この記事では、一般的にも使われている、猫舌についてご紹介します。
もくじ
猫は本当に熱いものが苦手?猫舌の語源
猫舌(ねこじた)とは、高温のものを飲食することが苦手とする偏食の形態である。猫が熱い食べ物を食べようとしないことになぞらえたものである。
猫舌というのは「熱い食べ物を口にできないこと。またその人のこと。」とされており、語源は江戸時代にまでさかのぼります。猫は昔からねずみよけとして室内で飼われており、人の温かい食事を与えたが口にしなかったため猫舌という言葉が生まれたという説があります。熱い味噌汁をかけた猫まんまでも与えたけれど食べなかったのでしょう。温かい食事の方が美味しいような感じがしますが、実際はどうでしょうか?
30度〜40度が動物の食事の適温?
猫の好む食事の温度を調べた研究によると、35度をピークに温度が上がるほど食事を好む割合が増えます。しかし35度を境に猫が好む割合は急激に減少するという結果でした。
猫に限らず動物はほぼ猫舌と言えます。そもそも自然界で動物は熱いものを口にする機会はほぼありません。火を使い調理することができるようになった人だけが「猫舌」を克服した動物と言えます。人以外の動物は「温かい食事の温度=獲物の体温」のため、動物の食事は約30~40度程度が適温と言われています。
犬も元から”猫舌”だった!?
犬も昔から人の側で生活してきた動物ですが、昔は基本的に外で飼われていました。外で食事をしていた犬は冷めた食事をもらっていたのでしょう。犬も本当は熱過ぎる物が苦手ですが、「犬舌」ではなく、「猫舌」になったと考えられています。

猫と犬の飼育環境が違えば”猫舌”という言葉もできなかったかもしれないと考えると、興味深いですね。
では、猫は食べ物の温度はどこで感じているのでしょうか?
猫はどこで物を判別しているの?
猫の感覚器の中で敏感なのは、「鼻」「舌」「手足」です。
何か興味を引くものを見つけるとまずじっと見つめますが、猫は人と比べて視力はそれ程よくありません。人のように細かいモノは判別できないし、焦点距離が異なるため2~6mと比較的遠くのモノが猫にはよく見えるようです。そのため視力では熱いか冷たいか判断することはできません。
そんな猫が新しい物を確認するときには、まず前足を使い恐る恐る触れてみた後、顔を近づけて鼻や口で判断しています。
猫は「鼻」と「舌」で温度を感じ取っている
敏感な感覚器である手足ですが、温度に関しては肉球は鈍く、あまり役に立ちません。そこで猫はまず顔近づけた際に鼻を使って温度を感じていると考えられています。猫は犬程ではありませんが、人の数万から数十万倍の嗅覚があると言われます。匂いを嗅いでいるだけのような仕草に見えますが、実は匂いだけではなく温度も感じています。また、猫は舌でも温度を感じることができます。しかし、熱過ぎるものを口にしてしまうと、口の中を火傷してしまいます。
猫は甘さを感じることができない?
多くの生物の舌には味蕾と呼ばれる部分があります。味蕾では味を感じていますが、人の味蕾細胞が約5000~10000に対して猫は約500と少なく、「酸味」「苦味」「塩味」の3つしか感じることができないと言われます。「甘味」や「旨味」は感じることができません。肉食動物である猫は「甘味」を感じる機会がなく、逆に腐敗した肉に敏感なため「酸味」を感じやすいのです。そんな重要な味蕾を傷付けないように食べ物の温度には敏感です。
熱いのが苦手な猫舌。でも冷たすぎもNG!
猫に食事を与える際に、冷蔵庫に入れておいた缶詰を与えると食べてくれないことがあります。
しかし、猫舌だからと言って冷た過ぎるものも苦手です。冷た過ぎる食事は胃腸に負担をかけ、お腹を壊してしまう恐れもあります。
通常は常温の食事で問題ないですが、食欲がないときなどは温めることで香りが引きたち、食欲増進効果が期待できます。しかしその際には猫は猫舌なため、温め過ぎには注意が必要です。また高温になりすぎてしまうとビタミンなどの栄養素が壊れてしまう恐れがあります。
猫の食事は人肌程度の温かさが適温
ドライフードを温める時には、ぬるま湯を使ってふやかしたり、食器自体を温めるといいでしょう。ウェットフードを温める時には、湯煎したり、電子レンジを使用するといいでしょう。また、冬は飲水量も減る傾向があります。好みにもよりますが、人肌程度のぬるま湯を好む場合があります。
まとめ
“猫舌”の語源の由来の猫はもちろん、人以外の多くの動物は猫舌と言われています。
動物と暮らしている飼い主さんは食事の温度には気をつけてあげてくださいね。

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