猫を既に飼っているけど、さまざまな事情で新しく別の猫を迎えようとしている飼い主さん。
多頭飼いする時の注意点はあるのか、迎え入れる前に知っておきたいですよね。
このアニポス公式ブログでは現役獣医師が飼い主さんの悩みを解決する記事を執筆しています。
この記事では猫の多頭飼いの注意点やコツをお話しします。
もくじ
猫の多頭飼いの最も注意すべきは猫の「年齢」
猫の多頭飼いで最も考慮すべきことは猫の「年齢」です。
みなさんの愛猫はおいくつですか?また、それは人間に換算するといくつぐらいでしょうか。
年齢換算の方法がわからない方は、以下の式で計算してみてください。
猫と人間の年齢換算
生後1ヶ月:1歳
3ヶ月:5歳
9ヶ月:13歳
1 年:18歳
2年:24歳
その後は1年で人間の約4歳分歳を取ります。
※おおよその数字です
つまり2歳以上では(猫年齢-1)×4+20 の式で人間の年齢に換算することができます。
なぜ、最初に年齢換算の話をしたかといいますと、人間と比較して猫ちゃんは年齢が見た目に表れにくいからです。例えば1歳の猫ちゃんと8歳の猫ちゃんですと、ぱっと見た印象はそこまで差がないと思います。しかし人間に換算すると、約18歳と48歳になります。
ちょっと想像してみてください。ある日突然、家族が30歳も年齢が離れた知らない人を連れてきて、
『今日から新しい家族が増えたよ!仲良くしてね!』と言ってきたら、あなたはどう反応するでしょうか?
『いやいや聞いてない!ていうか誰?せめて相談してよ!』と返すのではないでしょうか。
しかもお気に入りの食器やソファー、寝具まで断りなく使われて、我が物顔で寛がれでもしたらもう最悪ですよね。
先住猫さんに断りなく2匹目を迎えるということは、つまりそういうことです。
猫は年齢や性別が大きく違っていても、人間から見たらほとんど変わりない見た目なので、つい「2匹一緒でカワイイ♡」と思ってしまいますが、頭の中で擬人化してみるとその違和感がお分かり頂けるのではないでしょうか。
多頭飼いを検討する時は「年齢」を考慮する
多頭飼いを検討するときは、まずは愛猫の年齢と飼育予定の猫の年齢を考慮してください。双方若くて健康なら割とうまくいく場合も多いです。理想は避妊去勢手術をする前(生後半年程度)まで。人間に例えると小学生くらいまでですね。また、成猫でもメス同士はうまくいきやすいとも言われています。
反対に、最も注意が必要な組み合わせは成猫のオス同士です。お互いの縄張り意識を触発してしまい、マーキングなどの問題行動に発展する場合もあるので顔合わせは慎重に。
また、子猫と老猫の組み合わせもお薦めできません。例えば生後半年未満の子猫と15歳の猫の場合。子猫は人間でいうと幼児~小学校低学年、いっぽう15歳の子は人間でいうと約76歳です。ここまで読み進めてくださった方は、15歳の猫ちゃんが抱えるであろう身体的・精神的負担に気づいて頂けると思います。また、高齢の猫ちゃんは今後加齢に伴う病気が見つかることも多々あります。通院や介護など、思っていたより時間も金額もかかるかもしれません。よっぽどの事情がない限り、高齢猫ちゃんの同居猫として子猫を迎えるのは避けておくのが無難でしょう。できれば先住の高齢猫ちゃんとの残された数年を大切に過ごし、天国へ見送ってから次の子を考えてほしいなと思います。
猫の多頭飼いのコツ
新しい猫を迎えるにあたってのコツをお話します。
猫同士の相性を見るトライアル期間を設ける
新しい子を迎え入れる際に、その子との相性をみるために「お試し」で一緒に暮らしてみる期間のことで、これは当然やって頂きたいです。一般的に保護団体から猫の譲渡をうける時に行われていますが、最近はペットショップでも取り入れているところもあるようです。多頭飼育ではなくても(1匹目だとしても)人間との相性をみるためにやって頂きたいのですが、2匹目以降ですと猫同士の相性が特に重要になってきます。先住猫さんまたは新入り猫さんが大きなストレスを抱えて体調を崩したり、問題行動を起こしたりという問題がある場合、その子は諦めたほうが良いかもしれません。
猫同士の関係を焦らない
例えば知らない人を紹介してもらって、初めて会う時どうしますか?
まずは仲介者が「こちら○○さんです」と間に入り、その後自己紹介して名刺や連絡先の交換をしますよね。猫どうしのお見合いも同じです。いきなり二人きりにされたら困惑するのは私達人間と同じ。まずは新入りさんはケージに入った状態で、短時間の自己紹介タイムから始めましょう。臆病な子、警戒心の強い子、攻撃性のある子などではもっと慎重に。場合によっては実際に対面する前に「名刺交換」を済ませておく方法もあります。猫どうしの名刺交換は「におい」を使います。ハンカチで猫の顔の周辺を拭き、ハンカチににおいをつけたものを交換するのです。
フェイシャルフェロモンを活用する手段も
猫の「顔周辺のにおい」は正確には「フェイシャルフェロモン」と呼ばれます。フェロモンとは、動物どうしだけで感知することのできる「信号」のようなもので、有名な例としてアリの行列が挙げられます。先頭のアリがフェロモンを残していくことで、あの一糸乱れぬ行列を作っているのです。このように、人間以外の動物たちはフェロモンを使って様々な情報をやり取りしています。猫は飼い主や家具などによく顔や体を擦り付けますが、この時にその場にフェロモンを残しており、あとから通りがかった猫に様々な情報を提供しています。「私はこういう者です」「ここは俺のテリトリーだから近寄るな」「ここは安全」「ここは危険だから離れて!」など。そして、顔周辺から出るフェイシャルフェロモンには、猫の個人情報とともに「安心、リラックス、友好」などのメッセージが含まれます。ですから、顔を拭ったハンカチを先に名刺がわりに交換しておく手法が取られるのですね。
フェイシャルフェロモンは製剤もある
また、このフェイシャルフェロモンと化学的に類似した物質を薬品として製品化した製剤もあります。猫のストレスをやわらげる効果があり、多頭飼育のご家庭にも有効です。スプレータイプで家具や寝具に使えるものと、コンセントに差し込んだら成分が拡散するものとがありますので、興味のある方は動物病院にご相談ください。
楽しい経験を共にしてもらう
ひとまず短時間でも同じ空間にいられるようになったら、次のステップとして楽しい経験を共にしてもらうと良いでしょう。一緒におやつを食べると、一番手っ取り早く「楽しい経験」だと記憶してくれます。病気の治療などでおやつが食べられない子は、通常の食事でもOKです。1頭に1つずつ用意し、互いにある程度の距離を保って同時に食べてもらいます。この時も焦らず、短時間の面会から始めてあげましょう。徐々に一緒に過ごす時間が増えて関係も良好な場合は、少しずつ一緒に遊んだりのんびりしたりする時間を共有していきましょう。
まとめ
猫の多頭飼いを迎える前に気をつけること
・年齢や性別による相性をよく考える
・トライアル期間を設ける
・決して焦らない
猫の多頭飼いで最も考慮すべきことをまとめるとこんな感じでしょうか。
みなさまの楽しい多頭飼いライフの参考になれば幸いです。

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著者・谷口 史奈先生のプロフィール
動物病院3年、猫専門病院2年半勤務し、2016年8月に東京都品川区東中延に猫専門病院「猫の診療室モモ」を開院・同院長を勤める。猫の飼い主向けの講演・セミナー活動や、猫に特化した雑誌・サイトやメディアの監修や、コラムの執筆など、精力的に活動中。