子犬・子猫はまず検査から。人にも寄生する犬・猫の回虫とは?

2022年3月29日

ゆう動物病院
田積佳和先生

愛くるしい姿で今日もスリスリしてくれる皆さんの愛犬・愛猫。

しかし、そんなかわいいあなたの愛犬・愛猫でも、体内に寄生虫が住んでいることがあります。

この記事では現役の獣医師が犬猫の飼い主さんに向けて寄生虫のひとつ、回虫についてお話します。

回虫に対して理解を深め、ペットと健康的な暮らしができるよう理解を深めてくださいね。

犬猫などペットにも寄生する回虫とは?

回虫は消化管に寄生する虫の一種で、動物の種類によってそれぞれ寄生する回虫は異なります。
つまり、犬には犬回虫、猫には猫回虫、ヒトにはヒト回虫が寄生します。しかし、犬猫の回虫の場合でも、人間の体の中に入り込むことがあり、注意が必要です。

犬や猫はどうやって回虫に感染するの?回虫の感染経路

回虫の感染経路は、基本的にはなんらかのかたちで口に入れてしまったか、親を通じての感染になります。(イラスト例:猫の回虫感染)

  1. 感染能力のある回虫の卵(成熟した虫卵)を摂取してしまった
  2. 待機宿主(ネズミ・ニワトリなどの小動物、昆虫やミミズなど)を摂取してしまった
  3. 母子感染 犬回虫・・・母乳、胎盤を通じての感染
    猫回虫・・・母乳を通じての感染

もしも犬猫が回虫に感染してしまったら

成犬の回虫感染

・感染しても無症状
・妊娠すると子犬に感染
・便を通じ他に感染

成犬が、犬回虫の卵や宿主の体内に潜んでいる幼虫(被嚢幼虫:カプセル状のものにくるまった状態の幼虫のこと)を摂取してしまった場合、幼虫は犬の体内を移行し、その後全身の臓器や筋肉の中に、被嚢幼虫という形で潜みます。
この状態では犬は無症状ですが、全身に潜んだ被嚢幼虫は妊娠・哺乳時に活動を再開
胎盤や母乳を通じて胎児や産まれた赤ちゃんに感染します。

成猫の回虫感染

・無症状か軽い下痢や嘔吐など
・妊娠すると子猫に感染
・便を通じ他に感染

成猫の場合、摂取した幼虫の一部が被嚢幼虫となって、妊娠・哺乳時に活動を再開するのは、犬と同じです。母乳を通じて母子感染します。
犬と異なるのは、摂取した幼虫の一部が猫の体内で成長し、成虫になってしまう場合があることです。
成猫は成虫に寄生されても無症状か、嘔吐や下痢などの軽い消化器症状にとどまることがほとんどですが、糞便の中に回虫の卵が排出されるようになります。

子犬・子猫が回虫に感染した場合

・成虫になった回虫が消化器官に寄生
・栄養不要や衰弱につながる場合も
・便を通じ他に感染

成熟虫卵や被嚢幼虫を子犬・子猫が摂取した場合、幼虫は 消化管~肝臓~肺を順番に通過して喉に到達し、嚥下されて再び消化管に戻り、成虫となります
成虫は消化管に寄生して産卵するので、糞便中に虫卵が排出されるようになります。
回虫の寄生が多数の場合、栄養不良や衰弱、消化器症状の原因になることもあるので注意が必要です。

回虫は人間にも感染するの?

・人間も「待機宿主」幼虫のまま体内各所へ
・幼虫が入った場所によっては神経症状や視覚障害などの可能性も
・小さい子供や高齢者は免疫が弱いので要注意
・便を通じ他に感染

回虫の成熟虫卵や待機宿主をヒトが摂取してしまうと、ヒトの体内でも幼虫は全身を移行して被嚢幼虫となります。
つまり、ヒトも待機宿主の一種だということです。
この際に、脳や脊髄などの神経系や眼球などに幼虫が移行すると神経症状や視覚障害などの重篤な症状が出ることがあります。
高齢者やお子様など免疫が弱い方の場合にとくに注意が必要です。
回虫卵は、感染能力のない未成熟な状態で産卵されます。産卵からおよそ3週間で成熟して感染能力を獲得するので、ヒト・動物への感染を予防するためにも糞便は速やかに片付けるようにし、トイレはこまめに掃除するようにしましょう。また、虫卵に対しては熱湯消毒も有効です。

犬猫の回虫症の治療方法とは?

・皮膚にたらすスポットタイプも
・数週間間隔で少なくとも2度投与

回虫症の治療薬は、内服タイプと皮膚につける滴下タイプ(スポットタイプ)がありますので、内服が苦手な猫ちゃんでも投薬が可能です。
1回だけの投薬では、体内で発育途中の幼虫には効果が不十分ですので、回虫のライフサイクルにあわせて2-3週間の間隔で再投与する必要があります

子犬・子猫は糞便検査を受けましょう

おうちに迎え入れた子犬・子猫ちゃんは速やかに動物病院を受診して糞便検査を受けましょう。

回虫は 子犬・子猫に母子感染します。子犬・子猫ではとくに注意が必要です。
糞便検査での虫卵の検出率は100%ではないため、複数回の糞便検査を受けることを推奨します。
待機宿主の摂取でも感染することがありますので、安心してスキンシップができるように、定期的な糞便検査や定期駆虫もオススメします。定期的な糞便検査、定期駆虫の間隔についてはかかりつけの獣医さんに相談しましょう。

アニー先生
アニー先生

回虫は目で見えない程小さな寄生虫なので、定期検査が重要ですね。

著者・田積佳和先生のプロフィール

山口大学農学部獣医学科卒業。ゆう動物病院(兵庫県加古郡播磨町)院長。

JAHA認定・総合臨床医。【所属学会】(ISFM(国際猫医学会),日本獣医皮膚科学会,日本小動物歯科研究会,日本獣医動物行動学研究会,災害動物医療研究会)

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