元気いっぱい、あちこちを走り回ったと思ったら、ぬいぐるみ相手にぐるぐる。
子犬たちにとっては、目にするもの全てが目新しく新鮮で、何を見ても刺激的。
人間の赤ちゃんと同じように、好奇心からいろいろなものをまず口に入れて確かめようとします。
もくじ
まずは「取り上げる」状況を避けることから
さて、口に入れても問題ないもの、安全なものばかりであればいいのですが、子犬にはそんなことはわかりません。
危険なものや人にとって大切なものであっても目の前にあればお構いなしに口に入れてしまいます。
口に入れてはいけないもの、入れてほしくないものを子犬の届く場所に置かないことは、子犬のいる家庭では基本中の基本、といえるでしょう。
口に入れたものを取り上げられることは、子犬にとっては自分で手に入れた「宝物」を無理矢理取り上げられるようなものです。
ものを取り上げることを繰り返していると、口に入れているものを隠そうとして飲み込んでしまったり、「宝物」を守ろうとして唸ったり噛んだりするようになってしまったりするようになる可能性があります。
「交換」もひとつの方法、でも・・・
子犬が望ましくないものを口に入れてしまった場合は、無理矢理取り上げるのではなく、自発的に口から離すことを誘導することを心がけましょう。
具体的には、大好きなおもちゃや食べ物と交換する、という方法があります。
取り上げられたと子犬に思わせないために、おやつを立て続けに与えたり、床に撒いて与えたりして子犬の意識を「宝物」から逸らせて、気付かれないように取り上げます。
ただし、この交換を繰り返していると、おやつをもらうためにわざといろいろなものを口に入れるようになる学習をしてしまう子もいます。
不適切な学習を防ぐためにも、口に入れてしまっては困るものを子犬の前に置かないようにすることが最重要です。
日頃からやっておきたい「ちょうだいトレーニング」
あわせて、日頃から「ちょうだい」(「アウト」)のトレーニングをしておくとよいでしょう。
「ちょうだい」のトレーニングは、子犬が口にしても問題のないもの(ガムやおもちゃ)を使います。
~ちょうだいのトレーニングのやり方~
準備するもの
・ふつうのご褒美 <ガムなど>
・スペシャルなご褒美 <ふつうのご褒美よりもっと魅力的なもの>
※スペシャルご褒美は、犬にはまだ気付かれないように用意してください!
①「おすわり」「ふせ」などおうちの子ができる指示を出します。
②犬が従ったら、飼い主が端っこを持ったままで、『ふつうのご褒美』(以下ガム)を犬
にくわえさせます。
③両手を使って行います。
ガムを持った手:ガムの端っこを持った状態で犬にガムをくわえてもらい、「ちょうだい」と言いながらとりあげます。犬が口から離したらすぐに「おりこう」「OK」「good」などいつもの褒め言葉をかけます。
反対側の手:ガムを犬が離したら、『スペシャルご褒美』を与え、さらにガムも与えます。
褒め言葉はいつも統一しておくほうがいいでしょう。
※ ガムをくわえたまま口を放してくれない場合は、そのままガムを床に押しつけて動かないようにし、「ちょうだい」と声をかけ、そのままの状態で犬が口を放す瞬間を待ちます。
口を放したらすぐに褒めて『スペシャルご褒美』をあげましょう。
これを繰り返すことで「ちょうだい」の言葉とともに『スペシャルなご褒美』が出てくることを学習させます。
「ちょうだい」で、犬がガムを喜んで口から放すようになるまで学習させます。
④ ③の手順が充分にできるようになったら、(ガムを手でつかんだ状態ではなく)
犬にガムを与える
→犬が噛んでいる途中で「ちょうだい」と声をかける
→犬がガムを放すのを待つ
→ガムを放したら取り上げ、褒め言葉をかけつつ『スペシャルご褒美』を与える
→すぐにガムを返す。
という練習を繰返し、「ちょうだい」で口を放すと『スペシャルご褒美』がもらえて、すぐにガムも返してもらえると学習させます。
⑤ガム以外に、おもちゃを噛んでいるときにも同様の練習をします。
⑥犬が慣れてきたら、『スペシャルご褒美』は手元から離れたところに置いておき、見えるところにご褒美がなくても、「ガムを放せばスペシャルご褒美がもらえる!」と学習させます。
いざ「ちょうだい」が必要な場面では、手元にご褒美があるとは限らないので、この学習ができていると役立ちます。
まとめ
最後に、子犬にとって目の前にあるものを口に入れて確かめるのは生理的な欲求です。
「ダメ」を繰り返すだけではなく、噛んでいいおもちゃを与えたり、ひっぱりっこなどの遊びを適切に取り入れたりすることで子犬の生理的な欲求を満たしてあげることにも取り組みましょう。
あわせて「ちょうだい」トレーニングを取り入れることで、子犬との子暮らしが人にとっても犬にとってもずっと充実したものになることでしょう。(参考書籍:こころのワクチン 著者 村田香織)

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著者・田積佳和先生のプロフィール
山口大学農学部獣医学科卒業。ゆう動物病院(兵庫県加古郡播磨町)院長。
JAHA認定・総合臨床医。【所属学会】(ISFM(国際猫医学会),日本獣医皮膚科学会,日本小動物歯科研究会,日本獣医動物行動学研究会,災害動物医療研究会)