私たち人だけではなく、犬や猫に関してもよく耳にするアレルギーという言葉。
テレビやSNS、動物病院の先生からもよく出てくるワードの1つですが、ではみなさんは
アレルギーがどういったものなのか知っていますか??
また、すでに犬や猫を飼われている方であれば、「
自己免疫疾患」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これらは、免疫が過剰に反応した病態を表しているのですが、アレルギーと混同されて使われていることがあります。
実際にアレルギーで通院しているペットを飼っている方なら、一体大切な子の体の中でどんなことが起こっているのか、気になるのではないでしょうか。
今回は、「アレルギーって実際のところ何なの?」というテーマで、詳しく解説したいと思います。
もくじ
まずは良く聞く言葉「免疫」を復習
免疫とは、私たちの体に元来備わっている外からの異物(細菌やウイルスなど)の侵入を防ぐ防御機構です。
その機構を担うものとして、白血球と呼ばれる免疫細胞があります。
免疫細胞にはいくつかの種類があり、好中球やリンパ球、好酸球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞などが含まれます(今回はそれぞれの細胞の特徴は割愛します)。
免疫は、それらの細胞が上手に連絡を取り合い、協調性をもって働き、異物を排除します。
そして、免疫には、自分自身に働いてしまうことのないように幾重もの安全装置が存在しています。
アレルギーとは?
さて、上で述べたような免疫の『安全装置』が破綻し、自分自身に対して免疫が作用してしまう場合は「自己免疫疾患」と呼ばれます。
一方、外来の異物(例えば、花粉やハウスダストなど)に対して、過剰に免疫が働く場合は「アレルギー」と呼び、過敏症と言うこともあります。
つまり、普段は体にとって全く害のないものに対して読み間違えが起こり、過敏に反応してしまう免疫のことになります。
アレルギーはI型からIV型までの4つに分類されており、以下の表のようになっています。
しかしながら、全てのアレルギーが必ずどれかに当てはまるわけではなく、病態として複雑に絡み合っているのが現状です。
また、アレルギーの話の中で聞かれる「抗体」は、体に入ってきた病原体から体を守るために体内で作られる物質のこと。
一方「抗原」は、抗体をつくらせる原因となる物質のことで、つくられた抗体が抗原にぴったり合えば、体の中に入ってきた抗原を排除することができるのです。
アレルギーの分類(クームス分類)
I型 | II型 | III型 | IV型 | |
原因 | IgE | IgG | 免疫複合体 | T細胞 |
代表的な疾患 | 花粉症 | 免疫介在性溶血性貧血 | 糸球体腎炎 | 接触性皮膚炎 |
「IgE抗体」を検査する花粉症やアトピー性皮膚炎
I型アレルギー(即時型)は「IgE抗体」が原因の、花粉症やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーの一部などが有名なアレルギーです。
花粉やハウスダストマイト、卵などのアレルギーのもと・抗原に対するIgE抗体がつくられ、次にそれらが侵入してきた際に皮膚や粘膜に常在する肥満細胞に結合すると、鼻水や炎症、痒みが生じるという仕組みです。
花粉などのアレルギーのもとになる抗原は、アレルゲンとも呼ばれます。
動物病院で上記の疾患を疑った場合にIgE抗体の検査を実施するのは、どのアレルゲンに対して過敏に反応しているか調べるためです。
また、特徴として、症状が現れるまでの時間が短く、数分程度で起こる即時型です。
自分を攻撃してしまうII型アレルギー
自分の組織を攻撃する自己抗体(IgG)を生み出してしまうのが原因で起こるのがII型アレルギーです。
細胞や組織上に自分の抗原を認識してしまう抗体が結合すると、補体とよばれる分子の活性化を介して傷害が起こります。
また、マクロファージやナチュラルキラー細胞がその抗体を認識すると、抗体依存性細胞介在性細胞傷害ADCCが起こります。
犬や猫で多いのですが、自分自身の赤血球に対して抗体ができてしまい、赤血球が破壊されて貧血を起こす疾患である免疫介在性溶血性貧血IMHAがII型アレルギーに分類されます。
そのほかにも、天ポウ痩と呼ばれる皮膚の疾患もこれに分類されます。
ワクチン接種で引き起こされるアレルギーも
血管や組織への免疫複合体の沈着が原因となる場合を、III型アレルギーといいます。
大量の抗原と、それに対する抗体が結合することで、免疫複合体が形成され、それが腎臓などの血管壁や組織の基底膜へ沈着することで、補体の活性化による細胞傷害が起こります。
犬や猫においては、ワクチン接種により引き起こされる場合があります。
そのほかにも、血管炎や糸球体腎炎、全身性エリテマトーデスなどが分類されます。
診断には、抗核抗体の検出や病理組織検査が必要です。
食物アレルギーや接触性皮膚炎の原因はリンパ球
IV型アレルギー(遅延型)の特徴は、その機序に、抗体ではなく、リンパ球(T細胞)が中心であるところです。
獲得免疫には、液性免疫(抗体)と細胞性免疫(T細胞)の2種類の反応があり、IV型アレルギーに限っては、細胞性免疫が主体となります。
また、症状が発現するまでの時間が他のアレルギーに比べ長い(数日程度)ので、遅延型アレルギーとも呼ばれます。
時間のかかる要因としては、アレルギーの原因となる抗原が樹状細胞によって取り込まれ、リンパ節へ移行し、そこで反応の主体となるリンパ球へ情報が受け渡されます(抗原提示)。情報を受け取ったリンパ球は数日かけて増殖し、抗原のある部位へと移行し、そこで炎症を誘導します。
上記の反応は、ウイルスやがん細胞に対する反応と同じですが、抗原が自己抗原であるためにアレルギーとして生じます。
代表的な疾患として、食物アレルギーや接触性皮膚炎、薬剤(抗てんかん薬やサルファ剤)に対する過敏症が挙げられます。
まとめ
一言でアレルギーと言っても、いろんなタイプがあるのです。以上が、犬や猫でも認められるアレルギーの病態の基本です。
アレルギーといっても、このように多様な機序、症状、原因があります。そのため、検査や治療を実施する際には、しっかりと獣医師の先生に症状や経過を伝えていただくことが、重要です。
アレルゲンの侵入により、複数の臓器に対して炎症が過剰に引き起こされるアナフィラキシーについては別記事で説明したいと思います。

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